到着翌日は、さっそく場所の下見。8月6日に出発して7日に到着、プロジェクトの公開日は21日なので、設置まで含めてちょうど2週間。その間にどんな作品を作ってどこにどうやって設置するか、全て決めなくてはならない。アトリエで時間をかけて作るのとは勝手が違う。道具も材料もいつもどうりじゃない。それが面白さでもあるレジデンス。さて何が見つかるか、、
今回のA.I.R.は同時に滞在する作家が全部で4名、滞在しないがプロジェクトには参加する作家が1名の計5名。滞在先は個室が与えられて一人の時間とほかの作家と過ごす時間とのバランスも良いし、工具も豊富、植生は日本とだいぶ違うのでほとんど針葉樹だが、木などは物置に山ほどある。ほとんど何でもできそうだけれど時間がかなり限られている。
バックヤードにパルプを圧縮しただけの分厚くて白い紙を発見。なんとなくこれかな、と目をつける。
展示場所は、自然光が入って明るめの部屋、と希望を伝えると、1893年の新聞が壁紙の一部として使われている、程よく古びた建物の一室を案内してくれた。もう一つの候補、今は営業していないライブハウスも面白かったけど、自分の作品には新聞の部屋のほうが合いそうだ。場所はすぐに決まった。廃校になってしまったがとてもかわいらしい小学校や、教会、その昔罪のあった人をさらし者にした場所など、街の中も案内してもらいつつ下見を終える。水と緑が本当に多くて日本人には親しみやすい。違うのはかなり平坦だということ。冬のスポーツとしてスキーをするとのことだけど、平らなのでクロスカントリ―の方が主流みたいだ。
写真を撮り忘れてしまったけれど、昼食はフィンランドの典型的な鮭のクリームシチューみたいなものが有名だというレストランにつれていってもらう。鉄板な味。間違いない美味いやつ!
滞在先に戻り、構想と下描き。やはりあの紙を使うことにする。
この日からほぼ丸々3日、分厚い厚紙で切り絵を作るような作業をひたすら続けた。指と筋が悲鳴を上げてる。それでも、涼しいのと日が長いのとで、かなり長く作業できるし集中できるのがありがたい。この環境をなくしてはいけない、もし地球がこのあたりまで暑くなったら終わりだな、とか、切り絵の方法で作品を作るほかの作家のこと思い出したり、色々なことが頭をよぎる。
他の作家はそれぞれ自分の展示場所に出かけて作業をしているのでなんとなく焦る気持ちも出るし、他の作家に対して行うプレゼンテーションの準備もしなくてはいけない。事前のインフォメーションのために自分の今回の作品の説明やタイトルなども考えないといけないのだけど、とにかく切り抜き作業が終わらない事には次が見えてこない。
とはいえ、夕食は大概皆でいただくので、その時に少しずつ様子を聞いたり、フィンランド的な味覚や体験を用意してくれていたりするので、そんな諸々が昼の作業でコチコチになっている自分をほぐしてくれる。
さてこの週末は雨。みんなそれぞれのサイトに行けないので、皆で少し北のコッコラという街に出かける。響きが何となくかわいらしくて可笑しみもあるので、鶏の鳴きまねをしてみたり、次に飼う犬の名前は絶対にコッコラにするわ、とか、なんとなくワイワイしているうちに到着。
古い建物を使った美術館がまとまっていて、現代作家の絵画があったり、隣の建物では歴史的なものを展示していたりと、一度にいろいろなタイプのものを見られる。といっても規模はそれほど大きくないので、ほどなく見終わり、併設のカフェでお茶。みんなちょっとおやつをつまみたいらしく、ワッフルとコーヒーのセットを注文、していたけど、出てきたワッフルを見てびっくり!でか!テキサスにも負けないぜ!という感じの大きさ、にホイップがまたてんこ盛り。さっき朝食をいただいたばかりのアジア人には無理です。。皆さんの胃袋に脱帽。 食べ物の話といえば、夕食後にMammiというスイーツをいただいた。見た目は真っ黒なのだがちょっとあんこっぽくておいしい。ライ麦が主な原料で、こちらではイースターの時に食べるものらしい。ホストの気遣いが行き届いていて、「フィンランドっぽい」体験をたくさんさせてくれる。それらはみんな自分の国ではこんなものがあるとか、そんなの見たことないとか、雑談だけれどある種の文化交流の糸口になっていて、色々と聞きかじるのが楽しい。書き忘れそうになったが、もちろん個々の家にもサウナがちゃんとあって、(うらやましい!)しっかりデトックスさせてもらった。
雨の土曜日、からは一転、翌日はまた美しいお天気。晴れるとすごく空が高く感じる。それと、空気が澄んでいるのか、水が豊富だからなのか(空気は乾いているのだけど)色がとても濃く深く感じる。どちらかというと太陽光は斜めに射して、色は少し白みがかって見えるのかなと想像していたのだけど、想像と全然違っていた。
相変わらず私はカット作業をしている。今日は今からキノコ狩りに行くという。雨の後にたくさん出るのだそう。黄色い、傘がちょっとひらっとした感じのキノコ。みんなで篭やらナイフやら、たくさん詰め込んで出かけたのだけど、思ったようには出ていなくて、収穫は1個。でも、森の中も美しくて、野生のベリーがたくさん生えていて、食べられないけど綺麗なキノコも生えていて、それだけでも素晴らしい体験だった。
後日、夕食にフィンランド版キノコご飯が出てきて、摘んできたの?と聞いたらスーパーで買ったとのこと。キノコの風味とバターの絡みが良い感じだった。
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